AI×CPC

CPCでのAIの活用について

話し手:
株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション
代表取締役社長 鈴木 洋一 

近年、機械学習や深層学習などのいわゆる「人工知能(AI)」の研究や活用が様々なところで行われている。(株)クレジット・プライシング・コーポレーション(CPC)は、主に信用リスク評価に関わるコンサルティングやモデル構築を行っている少数精鋭のコンサルティング会社である。金融業界でもAIの活用が徐々に行われてきており、CPCにおいてもその有効な利用方法についての検討や研究開発を行っている。CPCの10年以上に渡るコンサルティング経験に基づいて、どのように金融実務にAIを活用したら良いか、代表取締役社長の鈴木洋一に聞いた。

CPCにとっての「金融」とは何か。

私の思いでは、「金融」とは、時間を買って挑戦を可能にするものです。個人であれ会社であれ、新たな挑戦を前にして、やりたいとき、やれるときに、金融がつけば全開で挑戦できるわけです。「貸すか貸さないか」という「1か0か」ということではなく、リスクに見合った価格=プライスを正しく設定できれば、貸すことが出来る相手が増え、挑戦出来る人や会社は増えるはずです。分かりやすい例をあげれば、日本には米国等で一般的な大学へ進学するためのステューデントローンは存在しないと言ってよいですが、リスクに見合ったプライスを正しく設定出来れば、その道は開ける可能性があるでしょう。

現実の金融の世界は、複雑な迷宮のようでもあり、私たちが扱う対象も広範囲に及びますが、私たちの方法論は、「分かりにくいリスク」やその「プライス」を目に見える形にしていくことに集約されています。そのために多種多様な分析データベースを作成し、数理解析技術を道具として使い、リスクモデルやプライシングモデルへと結実させていきます。よく見えなかったものが見えるようになって、その結果としてお金の流れがよくなれば、私たちは痛快な気分になることが出来るのです。

分かりやすい例をあげれば、日本には米国等で一般的な大学へ進学するためのステューデントローンは存在しないと言ってよいですが、リスクに見合ったプライスを正しく設定出来れば、その道は開ける可能性があるでしょう。

現実の金融の世界は、複雑な迷宮のようでもあり、私たちが扱う対象も広範囲に及びますが、私たちの方法論は、「分かりにくいリスク」やその「プライス」を目に見える形にしていくことに集約されています。そのために多種多様な分析データベースを作成し、数理解析技術を道具として使い、リスクモデルやプライシングモデルへと結実させていきます。よく見えなかったものが見えるようになって、その結果としてお金の流れがよくなれば、私たちは痛快な気分になることが出来るのです。

これまでも様々な数理解析技術を使用し、リスクモデルやプライシングモデルの構築を行っているが、実際の実務の中でどのようにAIを活用しているか。

いったんここでは、AIと機械学習モデルを同義として扱い、金融でのAIの活用を一般論で話すのは冗長なので、私たちが実際にサービスしていることを話します。

今行っている実例は、審査モデルへの適用です。審査モデルへのAIの適用でお金の流れがよくなって、お客様である金融機関の収益の増加にも直結すれば面白いと思って取り組んでいます。そういう意味では、お金の流れに直結するところでやりたいという目的意識が先にあって、そのための道具として、AIなり統計モデルなり最適化手法なりがもろもろあって、お客様やわれわれ人間の判断で道具の使い分けをしつつ試行錯誤するやり方です。審査モデルは個人向けも法人向けも対象になります。

そのような審査モデルでAIを具体的にどう活用方法しているか。

審査モデルにおいて、われわれが行う「道具の使い分け」の説明として、統計モデルとAIの比較をしてみます。それぞれによいところ、弱いところがあるので使い分けます。

まず、統計モデルでの審査モデルの利点は、ブラックボックス性がなくわかりやすいところです。

お客さまの審査実務のなかでの経験上の知識をモデルに反映し、納得してもらいながら構築していきます。

一方、統計モデルの特性として、デフォルト事象や破綻事象をあてようとした場合、最も典型的な事象をあてることにフォーカスされてしまって、変化球的なデフォルト事象を捕捉できない状況が生じます。

審査スコアがよいところから、デフォルトが発生したり、審査スコアが悪いけど、デフォルトしない部分集団が存在したりします。

私たちは、統計モデルのスコアリングから漏れるこの変化球的な部分に対してAIを活用します。

AIの審査実務への適用での課題はブラックボックス性ですが、利点は多様で変則的なデフォルト事象を捕捉できる潜在能力があるところです。しかも、環境変化(リーマンショック時の資金繰り破綻や新興ベンチャー企業の破綻増加等)に対しても動態的に柔軟に学習して、捕捉できる特性があります。

われわれは、統計モデルによるスコアを「背骨」としつつ、正常スコア領域からの変化球的なデフォルトを捕捉する「撃墜君」や、要注意スコアからほぼデフォルトしないグループを見つける「救済君」を実装しています。

結果として融資できる領域が拡大し、かつ、デフォルトによる損失を減らすことができ、よりよい審査モデルになります。こんな使い分けを、審査実務に長けたお客様と一緒に磨いていく仕事をしています。

では、今後AIを活用していきたい分野はどのような分野か。

金融業界全般の話はさておき、自分たちがやりたいこと周辺の話でさきほどの審査モデルの延長では、テキスト情報の活用はAI技術の有効な利用方法でしょう。

例えば、実務のなかで、会社の組織風土や経営力といった面で、良い会社・悪い会社をテキスト情報からモデル化するようなことをしています。やはり、組織風土が悪い会社は長期的に安定した成長はしておらず、様々な問題を引き起こしたりしている様子が見えてきており、とても面白いです。今まで見えていなかった部分が、透けて見えるようになっていくプロセスはとても面白いので、そんな挑戦はどんどんやっていくでしょう。

最後に、これからの金融業界またはCPCにとって必要な人材というのはどのような人材か。

「何のために道具を使いたいか」という課題の定義ができて、そのために「いろいろな道具を使い分けられる」人材が必要です。

課題の定義ができた段階で、仕事の相当な部分は実は終わっていて、ここが的外れだとお遊びみたいになってしまいます。

使い分けも、さきほどの統計モデルとAIという話だけではなく、統計モデルの中でも、AIの中だけでも使い分けの論点が山ほどあります。

データサイズが少ないのに、深層学習などの複雑なアルゴリズムを利用してもうまくいきません。「このような条件の問題なら、手法はこれで、各種設定は単純にして壊れにくいロジックを仕上げるべき」、といったバランスのよい判断は人間の判断に依存します。

多種多様な手法が存在する中で、そのような判断が素早く適切にできる、ということが金融業界においても弊社においても必要になっていると思います。

Profile

株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション
代表取締役社長
鈴木 洋一

略歴:
1985年横浜国立大学大学院経営学研究科修了後、野村総合研究所入社。その後、長銀総合研究所、長銀総研コンサルティングを経て、2001年クレジット・プライシング・コーポレーション設立と共に代表取締役就任。金融エンジニアリング分野、クレジット分析、コーポレートファイナンスなどの金融機関向け総合コンサルティングを行う。